杉本章子の「おすず」
今日は出かける事に成っていたのだが、色々有って
家を空けられなく成った。
仕方なく、ルーフバルコニーの方の花や植木の手入れをする。
狭い所故1時間もすれば、終わってしまった。
部屋の中は静かで、猫達も大人しく昼寝タイムに入った様だ。
私は先日から抱えている「おすず」を開く。
この本は、ryoさんの所で紹介されていた物である。
ある日本屋さんで、偶然文庫の「おすず」と「水雷屯」が
目に入り購入した。
作者は杉本章子で私にとっては、初体験である。
「おすず」は『信太郎人情始末帖』と言うシリーズの第1巻で、
中山義秀文学賞を受けている。(2002年)
その前1989年に直木賞受賞している実力者である。
さてこの「おすず」を読んでいて、ふと思い出したのが、
平岩弓枝の「御宿かわせみ」である。
「何処が?」と言われると長く成るので説明は控える。
この「おすず」の良い所は、主人公信太郎が許嫁(おすず)がありながら、
ふと魔が差した様に、年上の子持ちの後家(おぬい)と間違いを起こし、
親から勘当を受けて、おぬいの所へ転がり込む所だろう。
それがなければ、この話は始まらないのだ。
何事もなく、おすずと祝言して大店の後を継いで、
お人形が並んだ様な生活を選んでいたら、
信太郎のこれからの面白い人生は、幕を開けなかった。
この本には5つの短編が納められているが、
最初と最後に「おすず」の関連の事件を持って来ている。
このシリーズは、今年夏に出された
「銀河祭りのふたり」の7冊目で完結している。
女流作家が書いた本には、何処か女が匂う。
だが、この杉本章子の文章の中にその匂いがない。
私はこういう時代捕り物に、その匂いが無いのを快く感じた。
信太郎は、おぬいの息子に「おじちゃんは。お母さんの好い人なの?」
と聞かれて、長屋に越してケジメをつけて、この親子と交わって行く所が
この男の1つ目の成長だと思う。
信太郎は事件を解決して行く毎に、人情の機微を学び
一人前に成って行く。
次の作品は、又間を置いて読む事に成るだろう。
その時又何まわりも大きく成った信太郎に会える事だろう。
楽しみである。
by magic-days
| 2008-11-03 23:31