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雪籠り(2)

(ダイサギ)
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       「わたしの普段着」  吉村昭  新潮文庫

先日津村節子さんが書かれた、ご主人様(吉村昭)の闘病記
「紅梅」を読んで感動しましたが、
それは吉村昭と言う素晴らしい被写体があったればこそではないか?
確かに津村節子さんは芥川賞作家であるから、素晴らしい作家である。
だからこそ、モデルも書き手も申し分無い相手を得た本であった訳です。

私はその後、吉村昭と言う作家はどの様な人だろうと、思いは募るばかり。(笑
その思いから選んだ本は「わたしの普段着」
近所のお寿司屋さんとの付き合い、家出娘との縁。
取材旅行先での誤解や、人情味溢れる土地の店主との付き合い。
(カルガモ)
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戦争ものや歴史ものを書くに当たっての資料集めの徹底した収集は
定評があったようです。
自費で取材旅行に出掛ける事も多く、奥様から旅費を
出して頂く事もあったと記してある。

「黒船」と言う本を書いた時、主人公の美しい妻の墓が、下北半島の徳玄寺だと知って、
早春の頃訪れると、墓地は雪に覆われ、頂きに冠を頂いた様に白い雪が
乗っていた。
その佇まいに引かれて、吉村昭は北国にお墓を買っていた。
雪の中は暖かく、春が来ると墓の周りから雪が解け、
やがて碑面が解けた水で洗われた様に、現れるそうです。
吉村昭は今雪に優しく覆われて、安らかに眠られている事でしょう。

(ジョウビタキ)
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     「三年坂」  伊集院 静    講談社文庫
この本の有り難い事は、新装版で字が大きく
行間もゆったり取ってある事です。(笑
何年か前に「宙ぶらん」と言う本を読んで、何か満たされない気持が
残っていましたが、今回の本も短編集ではあるが、5つの短編は、
どれも秀作であると思います。

清らかで詩情豊かであり、人間の奥深い所まで到達する様な、
人生模様を感じます。
(メジロ)
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私は「チヌの月」に惹かれました。
老釣り師と「チヌ」と言うイシダイに似た魚のやりとりが、
実に魚釣りのしぶとさと、性までも感じさせる所に書き手の才の高さを
知らされます。
次は長編を読まさせて頂きます。
好きな作家が、増えて行く事が嬉しくて仕方ありません。
そしてこう言う時間を今与えられて幸せです。
by magic-days | 2012-02-13 20:01
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