「海辺のカフカ」
村上春樹さん50代前半の作品に成るのでしょうか・・・
不思議な物語です。
読んだ後も其の世界から中々抜け出す事が出来ません。
主人公田村カフカ(偽名です)は、幼い頃から父親に呪いの言葉を
何度も何度も心の中に打ち込まれて育った。
彼は15歳の誕生日に家を出ます。
高松に向かって、夜行バスに乗り込みます。
それは4歳の時に、カフカを残して、姉だけを連れて家を出た
母を探す旅だったのか?
(ツグミ)
只、父から逃げ出したい旅だったのか?
誰かに遭遇するための、旅だったのか?
物語は、カフカが動き出したと同時に、色んな人を
巻き込みながら進んで行く。
彼らは、カフカの動きと同時に、動き出したのでなく、
その前から高松に向かって動いていたのかも知れない。
「人が運命を選ぶのでなく、運命が人を選ぶ」
(ツグミ)
これは本文中で、高松の図書館司書の大島さんに、言わせた言葉です。
そしてこう続けている。
「それがギリシャ悲劇の根本にある世界観だ。・・・・・
・・・皮肉な事に当事者の欠点によってと言うよりは、
むしろ美点を梃子(てこ)にしてもたらされる。」
この物語は、ギリシャ神話「オイディプス王の悲劇」が、
被されている。
この悲劇を父親は息子の上に刻印を押した。
(カルガモ)
そしてカフカが直接手を下さず、もう1人の主役とも言うべき
「ナカタさん」が実行してしまう。
カフカは、この「ナカタさん」に何度か救われるのだが、
結局会わずじまいで終わってしまう。
世の中には不思議なことが起こる。
其の不思議な事は、表に出た事実であったかも知れないが、
そこに至る道筋は違っているかも知れない。
(ヒヨドリ)
何も不思議な事でなく、道理がちゃんと通る事かも知れない。
しかし、それを証してどうなる事と言うんだろう。
証さない方が良い事もある。
話さない方が良い事がある。
自分の想像力を働かせて、頷くだけで良いのではないでしょうか?
(カラス)
15歳の少年は、「不条理の波打ち際を彷徨うひとりぼっちの魂。」
彼は心の中に、カラスと言う名の少年を、住まわせている。
カラスによって、彼は心の平衡をを保つ。
これは、何も特別な事でないと思う。
(カラス)
誰でも、もう1人の自分を持っている。
それに依って、生きて行けれるのだと思う。
村上春樹さんは、大きな筆にたっぷり墨を含ませて、
大きな和紙の真ん中に静かに落とします。
(ツグミ)
そして四方八方に、墨が滲み込みながら流れているのを、
深い洞察力で観察している。
彼の知識は勿論豊富であるし、それは彼の本を読めば直ぐに
分かる事である。しかしそれだけでなくそこから
広がる想像力は、止まる事を知らない。
この本は、4年位前に何ページか読んで諦めた本でした。
今回何冊か彼の本を読んで、私はあの時自分にこの本を理解する
心の余裕も時間も無かった事に気が付きました。
今又此処で会えた事を感謝します。
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by magic-days
| 2011-01-07 15:53