けさの秋
そろそろ夏も終わりかなと思われる頃、一晩の雨の夜が明けて、
窓を開けると透明な風(白い風)がスーと肌を撫でる。
昨日迄の暑さが嘘の様な秋の訪れを「けさの秋」と言うそうである。
そして正しく先日の秋の到来を思わせる涼しい朝は、
その物であったと[天声人語」に書かれていた。
日本人の五感は、本当に素晴らしいと思う。
時々朝テレビをつけたままにして、
NHKのハイビジョンの「日めくり万葉集」を楽しみにしている。
今日の放送は、伝承料理研究家の奥村彪生の推薦で、
『ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に
溜まれる水の 玉に似たる見む
右兵衛(姓名未詳)(巻16・3837)
空から雨でも降ってこないか ハスの葉に溜る水が
真珠みたいに輝くのを見ようではないか。』
でした。
推薦者が料理研究家なので、当時の料理を紹介してくれた。
蓮の葉を干して、水で戻し大きな鯛を包み、
穴を掘って大きな石を6つばかり並べて、
その上で薪を燃やし、燃え尽きたら炭をそっとどけて、
先ほどの鯛を載せて、小石を上に敷き詰めて、
炭をその上に戻して、40分間待って蓮の葉に包まれた鯛を取り出すと、
美味しそうな蒸し焼きになっている。
蓮の葉の甘みが鯛に移り、何とも言えない香りがする。
それは記憶に残り、香りを思い出す度に鯛の味迄も
思い出せると言う。
嗅覚の記憶は、凄いと思う。
例えば帰り道カレーライスの香りがすると、
この間食べたカレーの味迄も甦って来る。
この歌は何かの会席の場で、蓮の葉にかけて歌を作る様に
言われたのであろうと想像してあります。
そして勿論膳には、蓮の葉のお皿の上にお御馳走が載っている。
多分蓮根の料理もあったでしょう。
何とも長閑で、遊び心溢れた会席の席ではないですか?
かと言って、この時代は今に比べて、のんびりしていた訳ではない様です。
仕事は今と同じで忙しく、もしかしたら今以上に、
とんでもなく朝早くから、働いていたのかも知れない。
しかし、大らかな部分も沢山あって、
人目も憚らず、愛を確かめ合ったり、「好きだ、好きだ!」と
呼び合ったり、思わず赤面してしまう様な歌も残っている。
それは決して嫌な感じでなく、むしろ微笑ましく思えるのは、
人間賛歌として受け留められるからでしょう。
この僅かな放送時間は、私を瞬時に万葉の世界に
連れて行ってくれる。
目が覚めたら、現実が待っているけど、急いでもしょうが無い。
ゆっくり少しづつ丁寧にやって行こうではないですか!
と立ち上がる。
あんなに暑かった夏も、段々薄らいで秋が来たではないですか・・・
急いでも、急がなくても人間の思いに関係なく
秋はやって来た!
有り難い事だ。
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自然観察の部屋の「井の頭・自然のできごと」が9/10、9/19に
更新しています。
興味深い観察記録ですので、是非ご覧下さい。
(9/11 11.508歩 9/12 6.398歩
9/13 10.240歩 9/14 11.982歩)
by magic-days
| 2010-09-17 20:10