(高源院)
「『銀の匙』の国語授業」 橋本 武 岩波ジュニア新書
作者は,1935年に旧制灘中学校に赴任されて,1984年に74歳で退職する迄
国語教師として、教壇に立たれていました。
この方のユニークな点は、教科書を使わずに「中 勘助」の「銀の匙」を
使われた事です。
灘校は私立ですから,中高6年間持ち上がりで、
同じ生徒を通して、教える事が出来ます。
その6年間を「銀の匙」1冊で通されたのです。
(カルガモ)
遊んでいるつもりで、自然に学んでいる事になる様に持って行きたい。
その為にも道草したり、脱線したりして、色々な事を体験させます。
凧を図画の時間と通して作らせ、凧揚げに興じたり、
「銀の匙」中でお能の話が出ると、観劇を体験し能楽部が出来たり、
短歌を作らせたり、何か新しい物が出てくると体験させて、
1つの事を多方面から理解させていた様に思います。
(花水木)
「勉強は長い人生を生きて行く為の基礎力をつける為であり、
国語は全ての教科の基本である。」
これがこの方のポリシーだったのでしょう。
学生時代にこう言う方に導いて頂いた生徒達は、
本当に幸せな人たちです。
心に残った点
「すぐに役立つものは、すぐに役立たなくなる。」
「今日の入試が、いかに残酷に若い人たちの学習意欲を
冷却させているか。」
「水準以上のことをやっていれば、心にゆとりが持てる。」
(ヤマボウシ)
「ヒトリシズカ」 誉田哲也 双葉社
この本は6章から成り立っていて、全て別人が語り手ですが、
物語の主人公は、静加と言う1人の女性です。
父親や母親の同棲相手が、家庭内暴力で母親を傷つけるのを
見て育ち、訴えた警察も無力で何もしてくれず、
子供心に誰も頼れず、信じれないと知らされる。
母親は男に頼っては、裏切られると言う情けない親で、
彼女は人を殺して家を出てしまう。
その後彼女は死んだのか、何処かで生きているのか、
消息を絶ってしまう。
しかし不思議な事件が、次々に起こる。
しかも姿を見せない若い女の痕跡だけが残される。
6章の中で、4章の「罪時雨」は初めて、静加の成り立ちが
浮き彫りにされる。
家庭内暴力は、現実社会でも紙面に出ない日は無い程である。
その被害者達が、皆静加の様に反撃に出れるだろうか?
作者は、この本で何を訴えたかったのか?
(ヒヨドリ)
この事件解決迄に17年間の年月が流れる。
事件の始まりの対処を、交番の若いお巡りさんが可愛いコンビニの
お嬢さんに私情を挟まなければ、事件は此処迄大きく被害者も
増えなかったのではないだろうか?
静加を救えたかも知れない。
悲しい幕切れです。
(井の頭・弁天池)
「『徒然草』の知恵」 嵐山光三郎 集英社
「銀の匙」関連の本を読むうちに、「徒然草」を読みたくなっていたのだが、
本屋さんでこの本を見つけた時、先ずはこれから行こうと思った。
この選択は賢い選択でした。(笑
この本の帯に、「スティーブ・ジョブズの信条は、兼好に通じている。
・・・・・・シンプルなものがすぐれている。」と
書かれていた。
新聞にアップルのディレクターが「アップルの経営は、シンプルである。」と
コメントしていたから、そうなのかも知れない。
(カルガモ)
兼好は物事の両面から見て、どちらの考えも肯定している。
私の様な凡人は、「どっちが本当なの?」と疑問に思うのだが、
作者は、どちらも兼好は肯定している。物事は1面だけでなく、
矛盾を抱えて存在すると言っている。
(カルガモ)
難しく考えずにシンプルに受け留めるべきなのかも知れない。
兼好は酒が好きで、賭け事も好きで、女性も好きだが
結婚はすべきでないと言ってる。
思いのほかロマンチストな人かも知れない。
勉強にはなりましたが、分かったとは言いがたいです。
難しい・・・・