男の夢・女の安心
主人の弟が定年退職して大学の講師などをしていたが
去年一切の勤めから退いたと言うことは聞いていた。
その後どうしているのかと思ってはいたが、
兎に角母が亡くなって要が取れた扇子みたいな兄弟姉妹で
何をやっているのかお互い没干渉。
ところが義妹が梨を送って来たのでお礼の電話をしたら、
義妹が言う所に依ると、弟は晴れて稼ぐ役目を離れて
やりたいことを始めた。
苺摘みのロボットを作っているそうである。
弟は飛行機の設計などしていた人で、そんな事ぐらい出来るだろうなと
思うが、実行に移したのは凄いもんだとその勇気に敬意を払います。
しかし、妹に言わせるとそんなもの買う人なんか居ないと言う。
「どうして?」と私。
「高いのよ。ロボットが!人が摘んだ方が遥かに安いのよ。」
しかし、そのロボットは赤くて食べごろのを選べるし、
葉の陰に成ってるのもキャッチするそうである。
「すごいなぁ〜」機械と言うものに弱い私は驚嘆した。
弟に取ってそれは、子供の頃の最先端を行くプラモデルに匹敵する
おもちゃなのだ。売れるかどうかなんて考えていないに違いない。
「持ち金が無くなるまでやるんですって・・・」義妹はため息混じりで
電話の向こうで呟いた。
「私たち子供がいないでしょ。お金取っとく必要が無いというのよね。」
義妹は諦め声である。
電話を切って私は弟のためにもこのロボットが売れることを
祈らずにいられない。
by magic-days
| 2006-08-30 21:57