思いは物語を越えて(1)

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    文芸誌「照葉樹」11号  「錯綜」  作 水木 怜

今回の作品の主人公は、子供の頃親の愛から弾かれた女で、
大人になっても、それがトラウマと成って彼女を苦しめ、
それ故かは分からないが、彼女に唯一優しかった同僚の愛を、
我が物にする為に、ストーカーと成った女である。
水木さんは、あるサイトでこの様に仰っている。
「如何してストーカーの物語を書いたのかしら?・・・・・・
 書きたかったのでしょうねぇ」とまるで他人事の様に。
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これこそが作家の性なのだと思う。
この方の作品の面白さは、会話に引っ張られてドンドン物語の深みに
嵌って行く所です。
私は何年か前に1度水木さんにお会いした事が有りますが、
小柄で優しいお顔の方で、私は姉の様に慕っています。
この時御一緒したReiさまは、私にとって上のお姉さまだと自分で
勝手に思っています。
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そんな印象の水木さんから、毎回考えられない様な恐い、
悲しい物語が生まれて来る。
人は愛や恋心がなくとも、見返りを求めない行為が有る事を
知らないで育った人が居る。
この主人公「なつみ」もそうである。
同僚の圭吾に愛されたと誤解して、妄想の中に生きている女である。

この2人の他に圭吾を逆恨みしている高見沢と言う
凶暴な男が絡んで、物語は予想もしない方向に転がって行く。
人間関係の難しさは、人それぞれの思いが交錯して、
思いがけない悲劇を生み、最初に賽を振った者の思い等
吹っ飛んでしまう事を想像出来ない事だと思います。

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   「気分はおすわりの日」   作 いせひでこ  理論社

絵本作家いせひでこさんの日常を、愛犬グレイのデッサンを
交えながら綴られた本です。
グレイはアレルギー症で、てんかん持ちと言う大変な病持ちです。
私も昔犬と暮らしましたし、今は猫2匹と暮らしていますから、
病持ちの動物と暮らす事がどんなに大変な事か想像出来ます。
何しろ相手は、犬語や猫語しか話せないのですから・・・
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そして飼い主は、絵描きなのだ。
絵の事となると、何もかもがぶっ飛んでしまう人で、
グレイは、何度も入院させられたり、ご飯抜きになったりする。
私は読みながら「なんて人なの!グレイが可哀想じゃないの!」と
何度も叫んでいる。
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ところでこのグレイと言う名前のいわれなのだが、
私が察するにあのロックバンド「GLAY」から来てる。
単に「いせひでこ」さんが、この頃「GLAY」が好きだったと
書いてあったから、そう思っただけなのだが、
自分の事をミーハーと言ってあったが、
成る程と頷いた次第です。

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     「七つめの 絵の具」   作 いせひでこ 平凡社

絵本作家いせひでこさんの絵の無い本です。
この本は、彼女の作品「ルリユールおじさん」や「あの路」の
後に書かれたエッセイだと思います。
2冊とも勿論読みましたし、彼女の作品の内でも大好きな本で、
好き過ぎて、思いが余って買ってるのを忘れて、
「あの路」は2冊も買ってしまいました。
いせひでこさんは、ご自分で書かれた物語に絵を付ける事は勿論、
他の方が書かれた物語に、絵を付けられる事があります。
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そんな時、物語を理解しどんな色にするかを決める為に、
水恐怖症の彼女は死を覚悟して、海に潜ったのです。
子供の頃水に溺れて死にかけた時から、彼女はプールも
恐くて入れなかったそうです。
しかし、仕事と成れば良い仕事をしたい思いで、
彼女は克服したのです。
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1つ1つのエピーソードは、そのまま「いせひでこ」を
連想させ、私は益々彼女が好きに成りました。
木の肌が好きで、香りが好きで、「スズカケみたいな人だ」と
知人の事を思ったり、四万十川から送られた無垢の木で出来た
トナカイを見て、四万十川に即行ったり、こう言う事が出来る
いせひでこさんの分身の様に成って、私も空を飛び海に潜り、
歓喜の叫びを上げている。
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by magic-days | 2011-11-29 11:23
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