第89回 粟谷能の会「鸚鵡小町」
(アオサギ)
先日久し振りに家族揃って、能を鑑賞して来ました。
今回は新太郎先生の13回忌追善能で、
能夫先生は「鸚鵡小町」を、明生先生は「一角仙人」を
務められました。
「鸚鵡小町」とは、
百歳の老女と成った小野小町が住む逢坂山に、
帝の歌を携えて新大納言行家が尋ねて参ります。
「雲の上は在りし昔に変わらねど、
見し玉簾の内やゆかしき」
このお歌に小町は、
「ぞ」と応えます。
行家が不審に思い尋ねると
「内やゆかしき」を「内ぞゆかしき」と
替えて返歌とした。
この様に贈られた歌の文句を部分的に替えて
答える技法を「鸚鵡返し」と言うのだと
説明します。
「宮中は昔と変わらないが、その様子を知りたいと思わないか。」に
「(強く)知りたい。」と返したのです。
「鸚鵡小町」の題名は、此処からつけられています。
小町は華やかな歌詠みだった昔を思い出し、
衰えた我が身を嘆きます。
その小町に、行家は業平の法楽の舞の再現を所望します。
ここで、前シテは舞台奥に下がり、傘と杖を置き代わりに
烏帽子と長絹を付け男装します。
(カワウ)
面はそのままで、奥から前に出て来られた時は
年老いた小町で無く、業平に成り切っていました。
小町が業平を追憶しながら舞います。
この序の舞は、心に静やかに何とも言えない淋しさを
送り込んで来ます。
昔を懐かしみ、今を哀れむ。
その交差した気持が、舞い扇を返す度に
引いては返し、返しては引きます。
舞い終わって、行家に別れを告げ傘と杖を持って
立ち上がったとき、見事に老女に戻っていられました。
(マンサク)
衣装も替えず、烏帽子もそのままにも関わらず、
見事なまでの百歳の老女でした。
終わってロビーに出た所で主人が
「isikawa くんだよ。」と腕を引くので
振り返ると、見覚えのあるお顔が笑っていました。
「36年振りです。」と亦にこやかに笑われました。
(カルガモ)
九州支店で同期で入社した方でした。
謡の会で共に学んだ仲でした。
面影ははっきりと残られていたので、
場所が違う所でお会いしても分かったと思います。
(クロッカス)
昔支店の茶室で、新入社員から次長迄隔たり無く
大きな声で謡い、唸ったあの頃が一瞬のうちに甦り消えて行きました。
もう2度と無い再会でした。
次の番組の迄の束の間の出会いでした。
慌ただしく席に戻る人々を見やりながら、
小町の気持が少し分かりました。
若い日の眩しい日々が甦ったのは一時だけで、
後に残るのは、淋しい余韻だけでした。
(3/10 7.847歩)
[5枚目の写真]
カワウは、大きな魚を捉まえましたが、大き過ぎて持て余し
捨ててしまいました。(苦笑
時々魚の死体が浮かんでいる事がありましたが、
こう言う事も有ったのかと、合点しました。
先日久し振りに家族揃って、能を鑑賞して来ました。
今回は新太郎先生の13回忌追善能で、
能夫先生は「鸚鵡小町」を、明生先生は「一角仙人」を
務められました。
「鸚鵡小町」とは、
百歳の老女と成った小野小町が住む逢坂山に、
帝の歌を携えて新大納言行家が尋ねて参ります。
「雲の上は在りし昔に変わらねど、
見し玉簾の内やゆかしき」
このお歌に小町は、
「ぞ」と応えます。
行家が不審に思い尋ねると
「内やゆかしき」を「内ぞゆかしき」と
替えて返歌とした。
この様に贈られた歌の文句を部分的に替えて
答える技法を「鸚鵡返し」と言うのだと
説明します。
「宮中は昔と変わらないが、その様子を知りたいと思わないか。」に
「(強く)知りたい。」と返したのです。
「鸚鵡小町」の題名は、此処からつけられています。
小町は華やかな歌詠みだった昔を思い出し、
衰えた我が身を嘆きます。
その小町に、行家は業平の法楽の舞の再現を所望します。
ここで、前シテは舞台奥に下がり、傘と杖を置き代わりに
烏帽子と長絹を付け男装します。
(カワウ)
面はそのままで、奥から前に出て来られた時は
年老いた小町で無く、業平に成り切っていました。
小町が業平を追憶しながら舞います。
この序の舞は、心に静やかに何とも言えない淋しさを
送り込んで来ます。
昔を懐かしみ、今を哀れむ。
その交差した気持が、舞い扇を返す度に
引いては返し、返しては引きます。
舞い終わって、行家に別れを告げ傘と杖を持って
立ち上がったとき、見事に老女に戻っていられました。
(マンサク)
衣装も替えず、烏帽子もそのままにも関わらず、
見事なまでの百歳の老女でした。
終わってロビーに出た所で主人が
「isikawa くんだよ。」と腕を引くので
振り返ると、見覚えのあるお顔が笑っていました。
「36年振りです。」と亦にこやかに笑われました。
(カルガモ)
九州支店で同期で入社した方でした。
謡の会で共に学んだ仲でした。
面影ははっきりと残られていたので、
場所が違う所でお会いしても分かったと思います。
(クロッカス)
昔支店の茶室で、新入社員から次長迄隔たり無く
大きな声で謡い、唸ったあの頃が一瞬のうちに甦り消えて行きました。
もう2度と無い再会でした。
次の番組の迄の束の間の出会いでした。
慌ただしく席に戻る人々を見やりながら、
小町の気持が少し分かりました。
若い日の眩しい日々が甦ったのは一時だけで、
後に残るのは、淋しい余韻だけでした。
(3/10 7.847歩)
[5枚目の写真]
カワウは、大きな魚を捉まえましたが、大き過ぎて持て余し
捨ててしまいました。(苦笑
時々魚の死体が浮かんでいる事がありましたが、
こう言う事も有ったのかと、合点しました。
by magic-days
| 2011-03-10 21:36