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「抱擁、あるいは ライスには塩を」

(ダイサギ)
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この「抱擁、あるいはライスには塩を」を店で見付けた時、
私は暮にハイビジョンで放映された。
「チーズと塩と豆と」と言う番組が、本に成ったのだと
勘違いしてしまった。
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それは、直木賞作家の4人(井上荒野、江國香織、角田光代、森絵都)が
ヨーロッパの田舎を旅しながら、其の土地の食生活と人々との
出会いをフイルムで伝え、その場で物語を書いて、
其の土地の俳優が出演して、ドラマにすると言う
込み入った番組であった。
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4回連続で放送された。
私は井上荒野さんに興味が有り(勿論本も読んだ事が有る。)
予告で知ってから、楽しみに待っていた。
番組は良く出来て居り、毎回楽しく見ました。

そう言う余韻がまだ残っている時であったので、
江國香織さんの本は今迄読んだ事が無かったが、
本の装丁も素敵で、衝動買いしてしまった。
(ヒヨドリ)
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久し振りの分厚い単行本であった。
読もうと持ち上げる度に、その厚さに本を読む
時間の濃さが伝わって来るようであった。

読み出しは、何と言ったら良いだろう?
皆さんは一条ゆかりさんのコミックを見た事が
お有りでしょうか?
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華やかで、優雅で、美しくて、美味で
まるで夢の様な家庭であり、登場人物達である。
余りにもピッタリ思い出したので、一寸含み笑いを
堪えながら読んでいた。

しかし、人生はそんなに美しさは続かない。
お御馳走も欲しくなく成る。
身体も衰えて来る。
(カルガモ)
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本の帯に
「3世代、百年にわたる。『風変わりな家族』の秘密とはー」と
書いてあった通り、徐々に家族の秘密があらわにされる。

最後の祖母の秘密が、1番ショックであったが、
しかし、この本には人間の醜さが無い。
財産の奪い合いとかもない。
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そう言う点は現実離れしているが、
そう言う世界があるかも知れない。
醜さや恐怖を面に赤裸々に出す事が、
小説の醍醐味ではない。
(ヒヨドリ)
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ある時は、おとぎ話に変えたり、夢物語にしたりして
そこはかと伝える事も文学だと思う。
これは、村上春樹の本を読んで知り得た事ですが・・・・

しかしこの様に少しづつ衰え、衰退して行く家族の物語は、
終焉に行く程、身に詰まされ悲しく成って行く。
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若い時は、只物語の中の話と達観出来たが、
色んな事を体験すると、そうとも言えない事がある。

全体的に良く纏まっていて、最後迄退屈する事無く
読み終えた。
いや、面白かったです。
(シメ)
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この題の「抱擁」は、大分変わった周りから浮いた家族達の
連帯の確認の様な気がする。
そして「ライスには塩を」は頑固で、規律を重んじる祖父から得た
自由に対する、祝杯をあげる喜びを表しているのだろう。
(シメ)
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いつか、もう1冊この方の本を読んでみようかと言う
気持に成っています。
それと「チーズと塩と豆と」も同じ集英社から出ている様なので、
次なる機会に読んでみたいと思います。

(1/16 4.454歩  1/17 10.854歩)
by magic-days | 2011-01-18 19:42
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