照葉樹第9号「ルイ子の窓」

f0086169_20485314.jpg

ryoさんがお友達と出してある「照葉樹」が、今回で9号を迎えました。
今回の作品は「ルイ子の窓」
送られて来て初めて見た時、この題から私は安易に
若い娘の恋愛ものと思ってしまいました。

ところが幾ら読んでも若い娘等出て来ない。
中年の手慣れた精神科医の日常が、丁寧に描かれている。
しかしこの医者に、私は好感は持てなかった。
f0086169_205524100.jpg

如何にも上から目線の患者の扱い。
頭の中で考える患者をどう扱おうかと計算する当たりは、
嫌悪感さえ感じる。
私は読み進むうちに、気が付かなかったが、
作者の思うつぼに嵌って行っていたのです。
怠惰な惰性の日々の中で、気分転換に寄るCDショップや
飲み屋での息抜きも、「何やってんだろう?」と言う思いで見ていた。
f0086169_2152637.jpg

その生温い空気感が一変するのが、
飲み屋で知り合った、何か心に危ういものを抱えた
ルイ子との出会いであり、
「ルイ子の窓」を見せられた時である。
主人公も打撃を受けたかもしれないが、
私も衝撃を受けた。
f0086169_2113327.jpg

目の前に突然、ダァーと流れる大滝の壁にぶつかった様な、
(この場合音は消音です。)
あるいは、この間テレビで見た砂丘の入り口の
砂の壁にぶつかった様な、予測出来ないものに
行き先を遮られて、ただただ佇んでしまった。

惰性に流された生活に、一撃を加えられる時が
何時かは来る。
f0086169_21171188.jpg

そしてその時、立ち直れるかどうかは、
その人が、どう本気で立ち向うかだと思います。
大きな打撃を受けて落ち込み、大きなドツボに
落ちれば落ちる程、その人は成長して行く。
その辺の過程が上手く書かれていると思いました。
f0086169_21243070.jpg

それと平行して、医者の家庭のいざこざが描かれていますが、
主人公の精神状態が伝わり、家庭と言うものがあっての
社会人だと教えてくれます。

医者の家庭らしくそれぞれが自分の立ち場で成長して行くのは、
物語の結びとして明るく、読み終わった時に、
良い感じで本を閉じれます。
f0086169_21303037.jpg

前半部に、医者としての立ち場や問題点を挙げて、
今の社会問題等も折り込んであり、随分勉強為さったのだと
思いました。
物語を構成し、裏付けを取り、1人1人の人間の存在が
実際に成り立つか?
実際に頭の中で、家の中を歩かせ、街を歩かせてみるのでしょうか?
今度ryoさんにお尋ねしてみたいです。
f0086169_21371246.jpg

物語の中で、不自然無く動き回る登場人物達。
その物達に、心を吹き込んで人格を形成して初めて
物から者へと成り立って行くのでしょうか?

現代社会の性虐待や心の病気を取り上げながら、
暗い話に終わらずに済んだのは、闇と光の境界線
ギリギリの所を光を見ながら書かれたからでしょう。

過去にも高齢化の問題や、都会の孤独を書かれて、
何処かに社会問題を、提起されるryoさんの作品に、
私はこの方の懐の深さや、社会を見つめる厳しくも
優しい眼差しを見る様で好きです。




(8/21  8.399歩  8/22  5.594歩)
[PR]
by magic-days | 2010-08-24 23:16
←menuへ