「静子の日常」

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’08「切羽へ」で直木賞を取られた井上荒野さんの
最新長編小説「静子の日常」を読み終える。
「切羽へ」は、私の回りでは、余り話題にも成らなかったようだが、
私はこの人の小説が、この作品で好きに成った。
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これと言って事件が在る訳ではない物語だが、
平坦な人間関係があり、何処かの町で起こっていそうな恋愛事件等
織り交ぜてある。
そんな異色な男女関係や、露骨な肉体関係の不必要な
状況場面が無くても、心の痛みや愛の深さが伝わって来て、
ある意味、もの凄いエロチズム等が伝わって来た。
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そんな前作の同じリズムを刻みながらも、
全く違う日常的な中のエロチズムを
75才静子さんの周囲で、ホツホツとくゆらすのは、
凄い才能だと思う。
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75才の静子さんは、まだ恋をして孫娘にまで、
「うちのおばあちゃんは、侮れない。」と唸らせる。
この物語は、3代の女性が主人公と言って良いと思う。
静子さん、嫁の薫子さん、孫のるかちゃん。
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それぞれの恋。それぞれの愛。そして人生。
何も特別な家族ではない。
極普通の家族である。
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その3人を動かしながら、読者を引っ張って行くのだから、
この人は、大した者である。
文学と言う物をちゃんと知っている人である。
そこはかとなく、淑やかで、媚びずに自分がこうと思ったら、
やり通す所は、多分この作家の性格なのかも知れない。
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静子さん=井上荒野さんなのだろう。
75歳になっても、こういう日々を歩くためには、
やはり、若い時からの人間形成が物を言うのだろう。
一朝一夕には、出来る事ではない。

そして、75才は「残る時間が無い!」と言う強みがある。
「進むか?退くか?」等と迷ってる暇はない。
進むのみである!
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後十年で、私も静子さんの寂しさや、心許なさが理解出来る様に成るだろう。
でも、それを廻りに悟られたらアウトなのである。
静子さんは、何時も晴れやかで、クロールで25メートルを
泳ぎ切るのです。
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by magic-days | 2009-10-07 10:42
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